
【導入編】
Q. 東出君の自己紹介をお願いします。
東出矩照(ヒガシデノリアキ) 南陽園入社9年目、 今年31歳(2017年入職)になります。 大学在学時に知的障害のある人の余暇活動を支援するボランティアに参加した経験から障がい福祉の仕事に就こうと思いました。
Q. 東出君は、福祉系の大学を卒業して、福祉の仕事をしていますが、そのきっかけや動機等について教えてください。
高校時代に進路に迷い、仕事を探す中で、ソーシャルワーカーという仕事に興味を持ったことがきっかけで福祉系の大学に進学をしました。私は、幼少期、両家初孫とあって祖父母にとてもかわいがられた経験があり、祖父母が入院をした際に、病院のソーシャルワーカーさんの仕事を何となく見ていたことが経験として大きかったのではないかと思います。福祉の仕事をすることで今度は自分が助ける側になりたいと感じ福祉を仕事にしたいと考えました。
Q. 大学で福祉を学び、その中でも障害福祉の分野を選んだ理由は何ですか。
大学に入学後、知的障がい者の方々の余暇活動の支援を行うサークルの新歓コンパに誘われたのがきっかけです。その当時は、タダでご飯が食べられると軽い気持ちで参加しました。話をしていく中で、サークルの先輩が同じアパートに住んでいることが分かり、とても気にかけてくれるようになり、最終的に、全く知らない人ばかりのサークルより参加しやすいという感じでサークルに入りました。サークル活動の内容は、「昭和区日曜学校」という催しを定期的に開催し、主に在宅で生活している知的障がいを持つ方の休日(日曜日など)に余暇活動としてレクリエーションや外出の同行(水族館や動物園などへの)を行うというものでした。参加する障がい者の方は毎回異なる為、その都度、個人個人に合った企画内容を仲間と話し合いました。学校で学ぶ知識とはまた別の実体験が、障害福祉を選択するきっかけとなりました。
Q. 南陽園を就職先に選んだ理由を教えてください。
私は、愛知県の大学に通っていたのですが、就職するにあたり、大学のある愛知県と地元の石川県の両方で就職先を探しました。求人票検索では石川県の実家からある程度近くで、法人規模が大きい社会福祉法人が運営している事などで選択条件を絞っていきました。その条件でヒットした法人の一つが南陽園でした。実際に南陽園の施設も見学し、施設の雰囲気や仕事などの説明が分かりやすく、石川県で就職するなら、南陽園だと思いました。
最終的には、愛知県の福祉の実習でお世話になった施設と石川県の南陽園と選ぶにあたり、石川県に帰ることを決めて、南陽園に入職することになりました。

【仕事編】
Q. 今の仕事内容を教えてください。
介護福祉士として、重度知的障がい者の方への生活支援、介護業務を行っています。
Q. 実際に福祉の現場で働いてみて、大学で学んだことと、現実とのギャップはありましたか。
大学では『福祉とはチームプレイで統一した支援を行うこと』と学んできました。実際に働くと、職員それぞれと支援する利用者様との関係性(好き嫌いや苦手、得意など)があり、同じように支援ができない場面がたくさんあり、結果として支援内容や方法を統一しきれなていない部分があることを経験しました。利用者様も職員もまた全く同じ人はなく、それぞれに個性があることを理解していたつもりでしたが、実際に働いてみて本当の意味で理解できるようになったと思います。
Q. 具体的に教えてください。(大学・学問≒理想と現実(実際の支援)とのギャップ)
利用者様は、一人ひとり、障害特性の違いや対応する職員によって接し方が変化します、また、その日の気分や体調といった面も合わさり、支援をする際に毎回うまくいくとは限りません。その日の状態に合わせた支援が必要となり、柔軟に対応することが大切だと今は分かりますが、入職した際は自分の支援がうまくいかず、悩むことが多かったです。その時は、先輩にアドバイスをもらったり、一緒にどうすればできるか考えました。自分のやっていることが本当に良い支援なのか疑問に思う場面もあり、何が正解かわからなくなったこともありました。しかし、今は正解を追い求めることも大切ですが、より良い方法を選択肢の中から選べるように自分の支援の幅や引き出しを増やしていくことが大切だと思っています。
Q. 特にたいへんだったことはありますか?
南陽園では、入職後、1年間は先輩と一緒に仕事をしながら学ぶ見習い期間があります。1年目は、介護職として基本的なことをOJTを通じて学びました。たいへんだったのは、2年目以降で、1人で仕事をするようになって、うまくいかないことが増えていき、悩んだこともありました。自分のやりたいことと自分のイメージとギャップが大きく、見習いの間は自分はできていたのに…と感じることもありました。
Q. ギャップがあるということは、自分の思い描いていた進路とは異なる面もあったと思いますが、その点について、どのように自分の中で折り合いをつけましたか。
入職時から、早く一人前になりたい気持ちが強く、できないことに対する焦りや全てのことに対して、全力で挑まなければならないという凝り固まった考えから空回りすることが多かったです。今はすべて自分がやらなければならないというわけではなく、任せるべき時は他の職員に任せて自分は自分に求められる部分に集中すればいいんだと気づくことができましたが、気づくまでは、本当に自分の中でもいっぱいいっぱいで、悩んでいました。
学生時はソーシャルワーカーとして相談支援の仕事をしたいと考えていましたが、今はしっかり現場でスキルを磨き、サービス管理責任者など管理職になりたいと考えています。職員と利用者様双方のニーズに寄り添える人間になることが目標です。

【私生活編】
Q. 休日の過ごし方を教えてください。
休日は、ドライブすることが多いです。令和6年能登半島地震前になりますが、能登半島の先端や伊勢神宮、温泉など遠くても日帰りで行くこともありました。子供がまだ小さいので、月に一・二回程度で楽しんでいます。妻と交代で育児をお休みにする日をつくっているので、月に1回は一人で過ごす時間もあります。
最近の楽しみは天気のいい日に子供と散歩したりして過ごすことです。
Q. 昨年度、第一子が生まれましたが、率直な感想を教えてください。
とにかくうれしいの連続。たいへんなこともありますが子供の成⾧を日々感じられることがうれしくてたまらないという感じです!
Q. 第一子が生まれての仕事と私生活のバランス、生活リズム等についての変化を教えてください。
子供中心の生活になったことが一番の変化だと思います。育児をどうするか考えてから、仕事をどうするのかを考えるようになりました。子供が生まれてからは、自宅に帰ってからの育児を考えて、しっかりと定時に帰ることを意識するようになりました。そのために、仕事のスケジュールを綿密に立てるようになったことも自分の中では大きな変化だと思っています。
Q. 南陽園として、初めて男性職員で育児休暇を取得されましたが、どうでしたか。
新生児という限られた時間を一緒に過ごすことができた経験はとても大きかったです。また、産後間もない時期に妻が出産と育児の疲れから体調を崩してしまったことがあったりましたが、自分が一緒に育児をしていたため、妻が安心して体を休めることができたことも育児休暇を取得できて良かったと思います。
Q. 職場の人の反応はどうだったのか。
結婚した当初より、育児休暇を取得したい旨を上司に相談していたので、安心して復職もできました。
Q. 育休を取得前と取得後を比べて、自分の考え方や想い、仕事のモチベーション等の変化はありましたか。
子供を守るため、これまで以上に仕事を頑張ろうという気持ちを持つことができました。父としての責任感が仕事に対する姿勢にも反映され、今まで以上にしっかりしなくてはという気持ちになったことが変化として大きいと感じます。自宅も新築したので、責任ある立場として、”家を守るため仕事も頑張らないと”と強く思うようになりました。
Q. 今、頑張っていること。取り組んでいることがあれば教えてください。
育児休暇より復帰して、まずは仕事に慣れることを意識しています。育児休暇前と違い、私生活に育児の時間が増えたことで、育児休暇前と同じように仕事ができるようになるために、具体的にどうすればいいか考え、やってみるという日々になっています。いずれは、夜勤もしっかり回数をこなせるようになるためにも、無理がないように仕事と育児のバランスをとれるところを模索していきたいです。
仕事の面では、より良い支援の方法を説明できたり、実践できるようになりたいと思っています。職場では若手になりますが、自分の意見をしっかり会議等で発言できるようになりたいです。そして他のスタッフが手本にしたくなるような支援を行うようになりたいです。
Q. 夜勤を再開するにあたり、家族は何か気にしていましたか。
夜勤を再開するにあたり、義父母や妻に対して、私が担当していた家事や育児について、どうしていくか相談しています。現在、我が家は担当制で育児をしているので、主に私が入浴を担当しているなど、私がやっている育児や家事を夜勤の際はどうするのか。また、夜勤から帰ってきた日はどうするのかを相談しています。今年の10月からは、妻の育休が終わり、復職していく予定です。それによって生活の状況にまた変化があると考えているので、家族が不安にならないようにしっかり話をしていきたいと思っています。
Q. 自分はどのように成⾧していきたいか、教えてください。
南陽園職員として更なるキャリアップのため、必要とされる技術と知識を習得し、利用者様の支援をより良いものにできる職員を目指していきたいです。今はまだうまくいっていないと感じる支援もあるため、課題の解決能力をもっと磨いていきたいと思っています。
将来は、管理職となりたいと思っています。南陽園では、スキルアップ、キャリアアップをすることの要件も明確で頑張っていけばチャンスはあると思っているので挑戦していきたいと思っています。昇格していけば、お給料も増えるので、家族に経済面で我慢をさせなくて済むようになると思うので、頑張っていきたいです。

【ミライトーク】
Q. 今の福祉の課題(現実と理想とのギャップ)の原因は何だと思いますか。
一番の原因は、福祉に対する良くないイメージが根強いからだと思います。かつては3K(きつい、汚い、危険)と言われてしまうことも...。実際にYOUTUBEで介護職を蔑んで紹介している動画を見たことがあり、まだまだそう感じていてる人は一定数いるのかと感じます。そのため、福祉を知らない人から職業の選択肢から避けられてしまうのではないかと懸念しています。
Q. それ(今の福祉の課題)を解決するためには、何をしていく必要があると思いますか。
今の福祉を知ってもらう必要があると思います。実際、ひと昔と比べ、介護機器の進化はすさまじく、またそれら機器の導入をしっかり行う施設は格段に増えていると思います。自分が就職活動中、とある法人はベットへの移乗はすべてリフトで行い、スタッフが利用者を持ち上げることは一切ないとアピールするところもありました。現在は、南陽園でもリフトを導入し、持ち上げない介護を実践しています。
ICTやIOTなども進んできていますので、10年後、20年後には、今、私たちがしていることも時代遅れになり、AIの活用なども当たり前になっている時代になっているかもしれませんが、人が人の支援をする部分は必ず残るので、仕事としては無くならないと思っています。そういったことをもっと発信していく必要があると思います。
Q. 南陽園のいいところを教えてください。
頑張ればキャリアアップのチャンスがあることだと思います。(昇格要件が定められており、職員に周知されています)
また、いろいろな事業所があるので、幅広い仕事、職種があり、いろいろな経験を積むことができることがいいところだと思います。
職員の育成についても、教育システムが確立しており、入職時に経験や専攻の学部・学科に関わらず働くことができます。
Q. 南陽園の悪いところを教えてください。
所定休日が少ないことです。しかし、昨年度からは新卒者の休日数は年間120日となりました。
また、以前に休日に勉強会や会議がある場合に、その時間だけ出てと言われることがありましたが、今は無くなりました。
Q. 南陽園がより良く変化していくためには、何が必要でしょうか。
やっぱり、若い力が必要だと思います。特にキャリアアップを目指そうとする積極的な姿勢を持った人が入ってくれることで、競争心が生まれたり、新しいことに挑戦したりする機運が高まると思います。先輩職員としても、若者に負けてられないというモチベーションになり、南陽園全体がよりステップアップできる原動力になるのではないかと思います。
また、新しい世代(Z世代やα世代)の考え方ややり方を取り入れていくことは、IOTやICTの更なる普及や現場での活用、将来のAI時代に対応していくためにも必要であると思います。
Q. 福祉の業界の先輩として、後輩や福祉の業界を進路として考えている学生さんへのアドバイスをお願いします。
進路を選ぶときは、どうしても業界や職種のイメージ、給与や福利厚生などを重視すると思います。しかし、実際に仕事をしてみると、業界や職種のイメージと違うところが多く、毎日、同じことの繰り返しに気づくと思います。社会人と学生とは大きく違います。課題にぶつかり、悩むことも多いけれど、解決策は意外なところに転がっていたりするので、視野を広げて、いろいろなことに気づくことが大切かと思います。私も、すごく悩んでいた時に、その解決の糸口は休日に遊んでいたときに見つけました。自分の選択肢、視野を広げ、続けることが大切だと思います。
福祉は、自分一人の仕事で何か成果がでるものではありません。そのため、同僚はライバルではなく、仲間の意識が強いのが業界の特徴かと思います。社会保障制度を提供する関係で、経済状況に左右されないことも大きな特徴にありますので、長期間でのキャリア形成を目指している学生さんにおすすめです。